ハーグ条約について、あまり報道で触れられないこと
米国籍を持つ子供が日本人親によって日本に連れ去られることについて、改善を求められてる件。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110905-00000005-jij-int
【ワシントン時事】キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は4日までに時事通信と単独会見し、国際結婚の破綻に絡む子の連れ去り問題について「日米関係の主要課題になっている」と表明、「日本で問題が広く認識されていない」と懸念を示すとともに、早期に進展がなければ、両国関係悪化につながる恐れがあると警告した。
米政府は、日本人の母親が米国籍を持つ子を配偶者に無断で日本に連れ帰るケースが相次いでいることを重大視。事件解決の手続きを定めたハーグ条約への早期加盟を迫ってきた。日本政府は5月に条約加盟の方針を決めたが、これまでのケースへの対応では進展がない。
で、コメ欄には日本人の母親はDV夫から逃れるためやむを得なかったのだ、こんな条約を批准するなつう意見がたくさん。記事のほうも「日本国内ではハーグ条約に加盟した場合、配偶者暴力(DV)を逃れて帰国した女性が、子供を連れて元夫の国に戻らざるを得なくなることから、加盟には依然反対意見が根強い。このため条約批准に向けて整備中の国内法では、子の返還拒否事由にDVを明記することにしている。」と書いてて、まるでこの条約がDVを軽視してるみたいな印象を受ける。
でも、条約の13条には、子供を元の国に戻さなくてもよいケースが書かれてるんだけど。HCCH | #28 - Full text
Article 13
Notwithstanding the provisions of the preceding Article, the judicial or administrative authority of the requested State is not bound to order the return of the child if the person, institution or other body which opposes its return establishes that -
a) the person, institution or other body having the care of the person of the child was not actually exercising the custody rights at the time of removal or retention, or had consented to or subsequently acquiesced in the removal or retention; or
b) there is a grave risk that his or her return would expose the child to physical or psychological harm or otherwise place the child in an intolerable situation.The judicial or administrative authority may also refuse to order the return of the child if it finds that the child objects to being returned and has attained an age and degree of maturity at which it is appropriate to take account of its views.
In considering the circumstances referred to in this Article, the judicial and administrative authorities shall take into account the information relating to the social background of the child provided by the Central Authority or other competent authority of the child's habitual residence.
子供が引き離される際に、子供の面倒を見ていたとされる者が実際は親権を行使していなかった場合、あるいは引き離しに同意していた場合。
子供が返還されることで身体的・精神的な危害を受ける可能性や、それ以外の耐え難い状況に置かれることが予測される場合。
子供自身が返還されることを拒否している場合や、自分の意思を表明できる年齢に達している場合。
この条文に関連する状況を検討する際には、子供の居住地の当局が子供の社会的背景について調査し、検討を行う。
つまり、この条約そのものに子どもがDV被害にあう危険性がある場合などは、無理やり子どもを戻す必要がないことが書かれてる。それをまるで、外国人夫が自分のエゴだけで子供を取り返せる条約だみたいに書くのは、どーかと思うよ。
ちなみに、こっちの記事によると、ハーグ条約を批准しない国に経済制裁すべきだという意見の議員もいるみたい。Left-behind fathers urge US to push Japan to sign Hague treaty - News - Stripes
Rep. Chris Smith, R-N.J., proposed legislation last month that would impose economic sanctions against Japan and other countries that demonstrate a “pattern of non-cooperation” in resolving child abduction cases. Smith tried to pass a similar law in 2010 but it died in the House, and it’s unclear whether the bill has any new support this year.
夫婦間のことはそれぞれ事情があるので一概に言えないと思うけど、自分が二度と顔を見たくない元夫であろうと、子どもにとっては父親であることは消えないと思う。それと、日本国内のDV防止法のことは「家族を破壊する」といって批判する人もいるのに、なぜ国際結婚の場合の「家族の破壊」にはそんなに寛容な人が多いんだろ?まるでみてきたように、日本人母親はDV被害者だという意見ばかり見るんだよなー。